2024年11月12日

生成AIの困った高度機能、素人にはフェイクを見破れない
真偽をチェックする「ファクトチェック産業」のチャンス

コラム13

フェイクニュース飛び交った大統領選

米国大統領選は接戦予想がはずれて「またトラ」の結果となったが、予想外にトランプ圧勝となった理由として「米国民は女性大統領を忌避した」「ハリス候補の迫力が弱かった」など解説されているが、筆者はどうも別の理由があったのではないかと疑っている。それは「情報工作」である。トランプ候補が選挙演説でハリス候補について全くあり得ないマイナス事実を主張している、という映像をテレビでしばしば見かけた。

また、道路わきに同様の嘘を表示した看板が多数立っている映像も見た。嘘も百篇繰り返せば多くの人は本物と信じるようになる、というヒトラーの選挙戦術を思い出す。しかも嘘を強力に拡散する手段をネット時代は獲得した。臆面もなく嘘を流し続ける鉄面皮が現代では支配者になれるのかもしれない。

ウクライナ戦争でのプーチンの主張や「核汚染水」などあれこれの場面での中国の主張にも、同様の「強硬にばればれの嘘をつき通す」鉄面皮の臭いを感じるが、筆者だけの感想だろうか。日本人には違和感があるが、中国国民には、反日思想がいっそう醸成される結果を招くかもしれない。もちろん、日本の政治の世界でも似たような現象があるが、海外のネット世界の方が深刻である。

「情報を正しく守る」というのは、デジタル社会で最重要の価値となった。

ファクトチェック、台湾、沖縄で活発に

台湾では総統選挙の前から、激しい偽情報が中国から流されてきて、そのファクトチェックする台湾の新聞社の活動などがテレビなどで紹介されていた。ネットに流れている情報が事実を述べているかどうかを点検し、評価する仕組みである。生成AIが強力になってくると、ある人物が主張しているコンテンツが、実は、まったくの捏造だが、姿かたち、発する声や調子は本人にしか思えない、という状況が生まれている。影響力ある人物の主張が捏造されれば、世論は間違った方向に誘導されかねない。

日本でも沖縄では地方新聞社がネット情報のファクトチェックを行う組織を立ち上げ、活動し始めている。歓迎すべき活動だが、元々、沖縄の地方紙の報道には偏向が疑われている。中立的ファクトチェックが行われているかどうか、全幅の信頼をするわけにもゆかない。オピニオンを発する組織が自らチェックする機関にも
なるのは無理がある。ファクトチェックするという姿勢は評価できるが。

専門会社も誕生

筆者はしばらくインターネット利用の先進とされる大学に奉職していたが、その教え子の中にネット情報のファクトチェックを専門にした企業を設立して事業を伸ばしているところがあるらしい。テレビや新聞などのマスコミから、ネットに流れた情報のファクトチェックを求めることから始まり、一般の企業も取引や事業展開の参考にネットに流れる特定情報の真偽の評価を求める依頼があるということだ。第三者によるファクトチェックの需要が高まっていると思われる。

翻って見ると、ウイルスやサイバー攻撃から情報を守るセキュリティビジネスは「産業」と言えるほどに大きくなった。いまや急成長の新産業である。「情報を守る」というのはユーザーが大きなコストをかけてもそのサービスを利用したい事柄になった。それに呼応して産業が発展して来たのである。

ネット社会に不可欠な産業になるか

新たに求められるようになったのはファクトチェックである。ネットにフェイク情報が氾濫して、何が本物で何が偽物か、判断が難しくなった。このままでは、「信頼」を前提にしてきたネット社会は崩壊しかねない。情報が本物かどうかを判定するのは重要な価値ある役割となった。そのノウハウを蓄積する集団ができてマスコミや行政、企業、個人ユーザーなどにそのネットコンテンツの評価を提供するサービスは需要が急拡大するに違いない。

新たに「ファクトチェック産業」が生まれるか。ネット社会の次代の成長産業の可能性がある。特に大きな根拠があるわけではないが、25年近く経済記者として産業の興亡を見続けてきた経験をもつ筆者の勘でしかない。なぜか胸騒ぎがする。新しいビジネス分野が誕生するのではないか。それがネット社会の正義を守る。

中島洋の「セキュリティの新常識」コラムは、こちら

お問い合わせ





資料請求



オンラインセミナー








CONTACT

お問い合わせ

お気軽にお問い合わせください。
オンラインセミナーも随時開催してます。

タイトルとURLをコピーしました