2018年04月25日

キャッシュレス社会の安全性

セキュリティ・コラム by MM総研所長 中島洋

自民党の経済構造改革に関する特命委員会(委員長・岸田文雄政調会長)は電子政府の推進に向け「次期臨時国会にデジタルファースト法案を提出する」ことなどを盛り込む提言を4月下旬にまとめた。近く政府に申し入れ、「6月にもまとめる予定の成長戦略への反映を求める」という。政府はすでに、現金を使わない「キャッシュレス決済」の比率を、10年後に決済全体の40%にするという目標を発表しているが、特命員会はこの提言の中で、この目標を改めて「世界最高水準まで引き上げるべきだ」と述べている。

交通系電子マネーやIT企業が管理する電子マネーが日本国内でも浸透しつつあるが、顧客の「囲い込み」の競争意識が強く、規格がばらばらで本格的「通貨」としては今一歩である。また、スマホにアプリを入れ、スマホをかざすだけで簡単に支払いができる最先端の電子マネーとは簡便さに差がありすぎる。

この状況に本格的な電子マネーで日本進出を計画していたのが中国の「アリペイ」をサービスするアリババである。すでにキャッシュレス社会が進展している中国からの旅行客は日本での買い物に簡便な「アリペイ」を使うので、日本の小売店もこれに対応する端末を準備し、急速に普及してきた。中国の旅行客とともにアリペイが日本に上陸しつつある。この勢いを駆って、アリババは中国人だけではなく、日本の消費者にも広げるため、「アリペイ日本版」を近く日本で開始する準備を進めてきた。

しかし、中国企業のアリババが運営するアリペイには警戒論がある。「情報保護」、安全性の問題である。

日本のユーザーのショッピング情報を中心にした個人情報が中国に集積されるのではないか。中国政府は現在のところ、露骨にネットワークから情報を傍受していることを隠さない。日本では個人情報を行政や第三者組織に移転することが厳格に規制されているのに、アリペイの利用者は中国政府の監督下に入るのではないか、という警戒論である。

仮に政府の監視下にないとしても、日本のショッピングなどのデータが日本企業ではなく、中国企業のマーケティングに利用されるのは日本企業にとっては脅威である。日本の個人情報保護下にあるサービスはユーザーの個人情報を勝手に集めることも禁止されているし、利用方法もユーザーの了解する範囲である。しかし、中国ではそのルールはない。

こうした警戒論から、日本の金融界や流通業界はアリババの日本進出には反対で、日本業界の協力が得られないことからアリババは「アリペイ日本版」の計画を一時延期することを余儀なくされた。

しかし、日本社会がいつまでも非効率的な現在の支払い・決済システムを続けているわけには行かない。中国からの「黒船」に刺激されて覚醒し、「キャッシュレス社会」への進展を急がねばならない。どのようにして簡便で安全に使える便利な電子マネーを開発し、定着させることができるか。自民党の特命委員会の提言を取り入れて、法制化がどのようなスピードで進むか。また、「マネー」は安全性が最も重要である。簡便さと安全性をどのように両立させられるか。政府だけではない。企業にも大きな課題になる。

 

ZenmuTech からのコメント by CTO 友村清

本年5月からの欧州版個人情報保護法(GDPR)の実施によって、個人情報の取扱いが重要になってくる。日本でも2015年の改訂個人情報保護法で、蓄積された膨大な個人情報をビックデータとして企業で利用しやすくなったが、一方、情報漏洩に対する罰則も新設された。インターネットの一般化でアリババの「アリペイ」を始めインターネット決済も多くの利用者がPC、スマホから便利に利用している。しかし、インターネットを流れる個人情報やサーバに蓄積される個人情報に対する警戒心は多くの利用者がかなり希薄は気がする。だが、これが中国となると、アリペイを利用すると日本人のユーザー情報が中国政府の監視下に置かれるのではないかと懸念を持つ方がいる。しかし、中国だけなく米国を始め多くの国々は情報を監視しているという現実を知るべきである。現在、個人情報を守る技術としては主にPKIなどの暗号技術である。暗号技術ではバックドアを設けることが可能である。秘密分散技術はこのバックドアを設けることを防ぐことができる。なぜなら、個人情報を秘密分散化した断片を本人が持つからである。

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