生成AI活用、見過ごせないローカルデータ保護の重要性

はじめに

生成AIの進化は、私たちの働き方に大きな変革をもたらしています。ChatGPTやClaude、Geminiなどの主要なSaaS型サービスだけでなく、API連携やテキストエディタの拡張機能など、多様な形でAIが業務に活用され始めています。AIの導入によって業務効率化の新たな可能性が広がる一方、データの取扱いにも別の課題が生じています。本コラムでは、拡大する生成AIの活用とともに重要性が増す「ローカルデータ保護」に焦点を当て、現状の課題や具体的な対策について考察します。

生成AIの便利さとローカルデータ保護の必要性

生成AIは今や、企画書や報告書のドラフト作成、デザイン支援、プログラミング補助など、専門的な領域でも活用されています。クラウド上のデータ連携に加え、PC内のローカルファイルを直接AIに読み込ませることで、作業効率とアウトプットの質を同時に高めるケースも増えてきました。今後はオフラインで動作するAIもPCやスマートフォンに搭載されるようになり、これまで以上にローカル環境での作業の重要性が増していくと予測されます。
多くの企業では、情報セキュリティポリシー等に基づきローカルへのデータ保存を制限していますが、AIの能力を最大限に引き出すためには、PCの処理能力を活かしたローカル作業が有効な場面も少なくありません。しかし、一律にローカル保存を禁止することは、生産性の低下を招くジレンマもはらんでいます。 そこで求められるのが、ローカル環境の利便性を享受しつつ、セキュリティリスクを低減できるソリューションの活用です。

ローカル活用シーンと残る課題

例えば、GitHubからクローンしたソースコードや、AIに学習させる機密情報を含むファイルがPC内に残っている場合、それらは紛失・盗難時に重大なリスクとなり得ます。 他にも、ObsidianやCursorといったエディタツールを使って、ローカルPCに保存したテキスト情報をAIで活用し、業務効率を向上させる事例を最近よく見かけます。しかし、これらローカル活用のニーズに対し、VDI やクラウドストレージなど従来のセキュリティ対策では、ネットワーク遅延に伴う操作性の低下や PC 本来の性能を十分に引き出せないといった課題が残り、AI の力を最大限に活かすことが困難です。
そこで本記事では、ローカルデータを保護し、AI と組み合わせても活用できるソリューションの例を示します。
使用するのは、ZENMU Virtual Drive Enterprise Edition（以下ZEE）です。

ZEE＋AIを使った簡易デモ

ZEEは秘密分散技術を利用してPC上のデータを安全に保護する製品です。ZEEを導入すると、PCに仮想的なドライブ（仮想ドライブ）が作成されます。この仕組みにより、PCを紛失・盗難に遭った場合でも、仮想ドライブ上のデータは保護され情報漏洩対策が可能です。秘密分散技術については[別コラム]( https://zenmutech.com/information/column-zenmu/20250605/)をご参照ください。
ZEEを活用することで、PCの性能を最大限活かしながら、情報漏洩の対策が可能です。

使用ツール例

ZEE, VS Code, GitHub Copilot, Obsidian（本記事では登場しませんが、ファイル作成時に利用）

実施内容

ZEE導入時の仮想ドライブ内に保存されたデータでのGitHub Copilot利用

生成AI活用1

通常のインターネットに接続されている状態で、「AI①～AI③」というタイトルの、生成AIサービスの特徴についてまとめたマークダウン形式のファイルが3つあります。
これらのファイルをVS Code 上で、GitHub Copilotを利用して新たなファイルを作成してみます。

生成AI活用2

3つのファイルの内容をまとめ、問題なく新たな要約したファイルを作成してくれました。
この後インターネット接続を切ってみます。

生成AI活用3

生成AI活用4

インターネット接続がない環境では、保護対象にしているファイルは秘密分散処理をされ、PCに残っているデータは無意味化された状態となります。（オフラインモードの設定をしていない場合）
そのため、今まで使えていたファイルが認識できなくなり、PC内のローカルのデータを一切閲覧することはできない状態となります。この状態であれば、インターネット接続がない状態またはZEEのサービスの機能である、“仮想ドライブのロック機能”を有効にすることで、上記の例と同様にローカルのデータを保護できます。

生成AI活用5

再度インターネットに接続された状態になると、ファイルが見えるようになりました。再びGitHub Copilotに質問しても、問題なく回答してくれるようになりました。
本記事の実演では、インターネット接続を切断した状態で仮想ドライブの秘密分散処理によるローカルデータの保護を確認しましたが、インターネット接続状態でも、仮想ドライブのロック機能を利用することで同様にローカルデータを保護できます。
また、ZEEにはオフラインでも利用可能な「オフラインモード」があります。事前設定をすることで、オフラインでもPCのデータを継続して利用可能です。またオフラインストレージとの接続が切れるとPCの重要データは分散され、データ保護が可能となります。
ZEEの機能の詳細について気になる部分や利用してみたい場合は、ぜひお問い合わせください。

おわりに

本稿では、拡大する生成AI活用と、見落とされがちなローカルデータを利用したAI活用の課題や懸念点について取り上げました。生成AIの活用は働き方を大きく変える可能性を秘めていますが、その恩恵を最大限に活かすためには、足元のデータ管理、特にローカルデータの保護という視点がこれまで以上に重要になるかと考えています。

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