レゾナック様 対談

【特別対談】テクノロジーで機密を守り、データで共創する レゾナック×秘密計算が拓く材料開発の新たなフロンティア

材料開発の高度化に向け、企業の枠を越えたデータ活用への期待が高まる一方、競争力の源泉である機密データをいかに守るかは、化学業界にとって大きな課題です。レゾナックは2023年から、ZenmuTechが開発する秘密計算ライブラリQueryAhead®を採用し、材料開発データを開示することなく分析・活用できるMI基盤の構築に取り組んできました。実際の材料開発テーマでは、サプライヤーを含む企業間でデータを秘匿したまま組み合わせ、物性予測の精度向上を実証。さらに、現場からの知見やフィードバックを重ねることで、QueryAhead®そのものの機能進化にもつながっています。本対談では、両社がともに試行錯誤してきた歩みを振り返りながら、MI×秘密計算が切り拓く新たな材料開発と、その先に広がる可能性について語ります。

株式会社レゾナック
計算情報科学研究センター
MI基盤開発グループ
グループリーダー
博士(科学)
清水 皇 氏

Resonac_Shimizu

株式会社レゾナック
計算情報科学研究センター
MI基盤開発グループ
博士(情報学)
酒井 基至 氏

Resonac_Sakai

株式会社ZenmuTech
技術開発本部
執行役員
平岡 正明 氏

ZenmuTech_Hiraoka

株式会社ZenmuTech
技術開発本部
ソリューション開発部
部長
石田 祐介 氏

ZenmuTech_Ishida

(目次)
1. 内外のパートナーとの「共創」を通じて競争優位性を維持するレゾナック
2. 先進技術を活用した全社の研究開発推進に取り組む計算情報科学研究センター
3. 秘密計算技術の取り組みを検討する中で、産総研と協業するスタートアップに注目
4. QueryAhead®で解決したかった課題
5. レゾナックが体現する「共創」
6. QueryAhead®導入による成果
7. レゾナック×産総研×統数研×ZenmuTechによる共創的な産学連携が実現
8. ディープテックに対するアプローチ
9. 両社共創の未来

1. 内外のパートナーとの「共創」を通じて競争優位性を維持するレゾナック

平岡氏(以下敬称略):このたびは対談の機会をいただき、誠にありがとうございます。はじめに、御社の企業概要と計算情報科学研究センターについてご紹介ください。

清水氏(以下敬称略):はい。レゾナックは、共創を通じて新たな価値を生み出す機能性化学メーカーです。2023年1月1日に、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合し、持株会社の「株式会社レゾナック・ホールディングス」と、事業会社の「株式会社レゾナック」が誕生しました。事業内容は、半導体材料、ハードディスク、SiC(シリコンカーバイド)、アルミ機能部材、機能性化学品、基礎化学品などの研究・開発・製造を行っています。特に半導体や電子材料の分野では、世界トップクラスのシェアを占める製品を多数保有しており、この分野を中心に成長を牽引する長期戦略を強化しています。また、当社は社内外のパートナーとの「共創」を大切にする会社でもあり、共創を通じて技術の変化に柔軟に対応することで競争優位性を維持しています。

また、私たちの所属する計算情報科学研究センターは、計算科学・情報科学による全社の研究開発推進と研究DXの牽引を主なミッションとしています。多様な計算技術を組み合わせ、原理原則の解明に加え研究初期から有効な設計指針を提示し、検討領域の最適化や研究開発工程の効率化を推進しています。具体的には、原子・分子レベルのシミュレーション、構造・流体シミュレーション、AI解析やマテリアルズ・インフォマティクス(MI)(※1)による個別製品の課題解決、社内外の技術データの蓄積・分析と活用推進、データ駆動型開発の基盤構築と人材育成などを一体的に実施しています。

※1 マテリアルズ・インフォマティクス:AIや機械学習などの情報科学を用いて新材料の開発や特性予測を高速化・効率化する手法。

2. 先進技術を活用した全社の研究開発推進に取り組む計算情報科学研究センター

平岡:ありがとうございます。まずは御社と当社との出会いから振り返らせていただきたいと思います。きっかけは御社が2023年の初夏、当社に直接お問い合わせをいただいたのが始まりでした。

清水:はい。当社のCTOと計算情報科学研究センターが先進技術の先取り、調査といったところを担っており、飛びぬけたシーズというところから新技術への挑戦という位置づけで、秘密計算技術にも着目しました。画期的な技術のため、まずは使ってみたいというところと、MI基盤グループとしてMIとの親和性について検討したいと考えたのがきっかけでした。

酒井氏(以下敬称略):私は、入社する以前に秘密計算という技術があると耳にしていました。入社後にこの技術に関わることになったのですが、まだ広く活用されていないということと、逆にMIが成熟しつつある中でこうした技術を組み合わせて活用できれば、複合領域となってブルーオーシャンになり、挑戦しがいがあるなと感じました。
平岡:御社は、先進的な技術やシナジーを創出できる分野については、積極的に研究のための人材やリソースへ投資を行っておられます。秘密計算技術に限らず、MIやAGI(汎用人工知能)など、今後それら抜きにはビジネスが成り立たなくなりつつあるような技術について、幅広いリサーチや積極的な検証をされておられると伺っております。

清水:そうです。データ基盤を整えながらそのデータをどのように活用するのかに主眼を置いています。当社が発足した2023年当時は、生成AIが注目され始めた時期ですが、その時から生成AIによる対話形式の検索システム「Chat Resonac」(※2)を構築し、社内での活用が進んでいました。秘密計算技術もそうした先進技術の一つとして注目していました。

※2 Chat Resonac:レゾナックが開発した生成AIを活用した独自の社内情報検索・活用システム。旧昭和電工と旧日立化成の統合に伴い、両社が過去に蓄積してきた膨大なデータや文書を対話形式で検索・活用できるようにすることで、属人化の解消や世代間・部門を超えたスムーズな情報伝承を実現している。

平岡:当時から生成AIを実践的に活用されていたとは驚きました。材料化学分野においては、各メーカーが膨大なデータをいかに活用すべきかを競い合っています。そうした中で、御社のように先進技術のリサーチから応用までを管掌する独立した組織を擁し、全社横断的に取り組んでいる企業は、私の知る限り決して多くはありません。

清水:合併前の1990年代、計算情報科学研究センターは、計算技術の中でも分子系のシミュレーションを中心に行う小規模な組織で取り組んでいました。そうした中、2023年にレゾナックへと生まれ変わったタイミングで、合併した2社のデータを突き合わせ、共通のデータ基盤を整備する構想が持ち上がりました。この組織的課題を解決するために、シミュレーションだけではなく、AIなどの先進的な技術を活用する、新たなDX視点での取り組みが重要だと判断したのです。

平岡:一般的に合併後のPMI(※3)に課題を抱える企業が多い中、御社は髙橋社長を筆頭に強いリーダーシップでPMIを成功させてきたのはそうした背景があったのですね。2023年に秘密計算技術の取り組みを開始されたのは、ちょうどそのタイミングでもあったと。

※3 PMI(Post Merger Integration):M&A成立後の経営統合、信頼関係構築、業務統合などの経営目的を実現するための統合プロセス。

清水:そうですね。加えて計算情報科学研究センターのモチベーション以外に、ビジネスインパクトへの影響もありました。その2軸で整理した時に、秘密計算技術が重要だと認識したのです。

3. 秘密計算技術の取り組みを検討する中で、産総研と協業するスタートアップに注目

平岡:秘密計算技術は今では他社も研究や開発を進めています。その中でなぜ当社へお声がけ頂いたのでしょうか。

清水:当時は様々な企業の先行情報や事例などをベンチマーキングしながら、秘密計算技術も活用していきたいという考えがありました。当社は技術を大事に考える会社なので、具体的に何ができ、どこまで踏み込んで取り組みたいのかを考える中で、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)と協業するZenmuTechというスタートアップに興味を持ったのです。

酒井:私も、一般には馴染みのない技術で、産総研とユニークな名前のセキュリティ企業がビジネス展開していることにとても新鮮さを感じました。ZenmuTechの第一印象は、かなり挑戦的な会社のイメージを受けましたが、密な話し合いや専門的な相談もできたので相性は悪くないと感じ、良好な関係性を構築できそうだと期待しました。

平岡:ありがとうございます。私は2023年7月に御社の研究・開発拠点「共創の舞台」を最初に訪問し、当社の秘密計算技術についてご紹介差し上げましたが、そのわずか2ヵ月後の9月にQueryAhead®を検証させてほしいと連絡いただいた時は、そのご決断の速さに驚きました。御社は様々な先進技術へのリサーチを行う一環で、秘密計算技術を選択する素地が既にあったのだと理解しました。事実、初対面のはずなのに、御社は秘密計算技術の理論を深く理解されており、具体的な活用に向けたペルソナもお持ちでした。初見でそこまで突っ込んだお話をされる企業は過去にありませんでした。

ZenmuTech_Hiraoka_Ishida

4. QueryAhead®で解決したかった課題

平岡:そこで、当社のQueryAhead®にご注目いただいたわけですが、これを活用してどのような課題を解決されたかったのでしょうか。

清水:当社は「混ぜる化学」と言っているように、サプライヤーさんから様々な材料を調達し、混練するわけですが、一方でそうした材料の素姓、すなわち分子構造や粘度、物性値といったところはわりと把握していないところもあり、それらもきちんと把握した上で、新たな材料系の物性予測などを進めたいと考えています。そのモチベーションとしては、今後は半導体材料分野にもより注力していくところであったり、当社としてはJOINT3(※4)などコンソーシアムを組みながら、より優れた製品を作っていこうとする駆動力がありましたので、それを加速するためにも効率的で柔軟な情報共有でお客様や取引先を知ることも大事だと思っています。そこにQueryAhead®が活用できるのではないかと期待したのです。

※4 JOINT3(JOINT:Jisso Open Innovation Network of Tops):レゾナックを中心に、日本・米国・シンガポールなどの半導体材料、装置、設計関連企業27社で設立され、現在は28社が参画する次世代半導体パッケージ向けの共創型評価プラットフォーム。企業間で材料・プロセス・実装技術の共同評価を行い、先端パッケージ技術の開発加速を目指す。

平岡:企業や組織を跨いだ情報のやり取りにおいては、NDA(秘密保持契約)を交わした上でオペレーションを回すことが一般的ですが、それだけでは課題感が拭えなかったということでしょうか。

清水:NDAを結んだ時点での約束事というところと、さらにクイックに開発を進めたい開発現場のスピード感とを合わせようとするとどうしてもミスマッチが生じます。そこはテクノロジーを活用して解決できないかと考えており、NDAとともに技術でデータを保護することができるのであれば、それは積極的に取り入れていきたいと考えていました。

5. レゾナックが体現する「共創」

平岡:御社はこれまでQueryAhead®をご活用頂いてきたわけですが、その過程でご苦労を おかけしたことも少なからずあったかと承知しております。

酒井:最も苦労したのは、秘密計算による線形回帰が計算の過程においてオーバーフローが発生し、原因もすぐに特定できなかったことです。これは出力結果がそもそも信用できないということでもあったので、非常に厄介な問題でした。また、秘密計算技術の特性上、計算時間が長期化するため、平文で計算すると一瞬で回答が得られるものが、秘密計算技術の場合は1日以上かかる場合もあり、レスポンスまでの時間の長さには苦労しました。さらに分散サーバ間の通信の不具合や計算処理上の原因不明な不具合によりスクリプトの実行が中断することが多く、結果を得るところまで完走できるか運次第なところも拍車をかけていました。再現性があればいいのですが、そうではないエラーも多数発生しておりましたので、コードを実行して結果を得る行為のすべてが困難なことでした。

石田氏(以下敬称略):本当にご苦労をおかけしました。当初QueryAhead®では行列すら扱うことができず、テーブルデータしか扱えませんでした。それを酒井様からの要望にお応えする形で、行列演算が可能なライブラリQueryAhead Arrayなどを開発し、一つ一つ対応していきました。大変ご苦労をおかけしましたが、QueryAhead®の進化には酒井様からのフィードバックが不可欠でした。

酒井
:複合領域という観点で、MIは同じ部署の中でも多くの人が手掛けており、そこを追従しても競合するため、他の研究者がやっていないところをやるしかないなという思いでした。実際には大変でしたが、現在はできることが増え、問題は起きにくくなっています。

清水:当社から厳しいリクエストやフィードバックもあったかと思いますが、そこを御社は逃げず、真摯に対応してくれたおかげで、今後も一緒にやっていこうというモチベーションにつながりました。

平岡:御社の皆さまとミーティングを開催するたびに印象的だったのは、必ず具体的なフィードバックをいただけたことでした。当社が改善したことに対して、御社は欠かさず評価され、課題や要望などをまとめ、ゴールを示されるなど、高い解像度で常にアップデートされました。向かうべき方向性、乗り越えるための方策、解消すべき問題を、全体の進捗とともに共有いただけたことはまるでドラマのように記憶に残っています。

また、御社が常に提唱されている「共創」が言葉だけではないことも感じました。当社を秘密計算技術の単なるプロバイダーとしてではなく、一緒に作り上げるパートナーとして位置づけ、共に作る以上は必要な情報は渡す一方で、言うべきことは言うという姿勢を示されました。御社の共創とはこういうことなのかと深く理解しました。

清水:そう言っていただけると私たちもうれしく思います。当社はバリュー経営というものに取り組んでいますが、「化学の力で社会を変える」というパーパスを実現するため、社員一人ひとりが4つの共通価値観(バリュー)である「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」、「機敏さと柔軟性」、「枠を超えるオープンマインド」、「未来への先見性と高い倫理観」をそれぞれ自分事として業務に臨んでいます。ポイントは、異なるバックグラウンドを持つ関係者同士がバリューの経験を語り合い、共感から新たなイノベーション(共創)を生み出す土壌を作る「共感と共創」や、価値観を拠り所に個々の能力を高め、多様な技術やパートナーとの連携を強化する「共創型人材の育成」です。その中で個々人が活躍する、意思を発揮するというのは、プロフェッショナルとしての「こだわり」というところもあり、「やり切るぞ」という意思を高く持つということを大事にしています。

Resonac_Shimuzu_Sakai

6. QueryAhead®導入による成果

平岡:2026年3月に開催された「2026年電子情報通信学会総合大会」の「情報論的学習理論と機械学習セッション」にて、御社は産総研と当社との共同で研究発表を行い、「秘密計算の下での効率的な t 分布型確率的近傍埋め込み法の計算」をテーマに、秘密分散技術を活用した具体的な成果を実証されました。これも、共創による一つの成果となりました。

酒井:QueryAhead®導入の成果は、従来は予測できなかったことが予測できるようになり、精度改善につながったほか、データがないとモデルが作れなかったことが解決できるようになった、その方向性を示すことができるようになったことです。これらの成果を実際の製品開発の現場に落とし込んでいくことが、今後のチャレンジだと考えています。

清水:私は、サプライヤーさん向けにJupyterHubに秘密計算プラットフォームを乗せて、提供できるようになったというのが本当に大きな成果への第一歩だったと考えています。NDAがありながらもですが、多数の企業がある中で、データ共有を行えるスペースを構築することが今後の化学業界の駆動力になっていくと思いますが、お互いに機密情報を守りながら相手の企業に技術を提供しようということは容易ではありません。しかし今回、両社の共創により、これが化学×秘密計算の一つの成果として結実したのではないかと考えています。

平岡:成果の中で当社が注目しているのは、御社のデータのみで物性を予測した場合の予測誤差を示す平均二乗誤差(※5)がサプライヤーさんのデータも秘密計算技術を活用して結合すると80%近くまで誤差が削減されたことです。これはどれほどのインパクトがあるものなのでしょうか。

※5 平均二乗誤差(MSE:Mean Squared Error):予測値と実際の値(正解値)の差を2乗して足し合わせ、データの総数で割った値のこと。機械学習や統計学の回帰問題において、モデルの予測精度を測る評価指標や、誤差を最小化するための損失関数として広く使われている。

酒井:まず誤差が少ないことは実際の実験値に近いことを表すので、コストがかかる一つ一つの評価を経ずにモデルで見積もることができるようになりました。そして精度が良いということは、実験前の有望な候補の絞り込みを高い精度で行えることにもつながるため、実施する実験数を削減することで工数やコストの削減、時間の大幅な短縮につながります。

清水:化学業界はサイエンティフィックな実験を行って次の一手を打つという、産業でありながら学術的なアプローチを取りますが、その中で情報がないと次の一手をどう打てばいいのか、従来は想像でしかできませんでしたが、誤差が少なくなるということは検討範囲を絞ることができるため、そこが「企業間で」できるようになってきたことは大きな進化だと考えています。

平岡:よくわかりました。今回のように秘密計算技術の価値を定量的に実証されたことは、今後御社がJOINT3に代表されるような他社との共創において、御社のみならず共創されるパートナー各社にも安全なデータ流通による便益がもたらされるような枠組みの端緒をつけられたという点において重要な意味を持つように思います。

清水:データ活用の動きは世界にもいくつか枠組みとして存在しますが、大きな絵を描き過ぎるとハードルが高すぎてなかなかうまくいかないということもあるのではないかと考えています。スモールスタートでも良いので、テクノロジーを活用しながら「ここから始められるよね」ということを互いに実感しながら、仲間を増やしていくという取り組みが今後重要になってくると思います。

7. レゾナック×産総研×統数研×ZenmuTechによる共創的な産学連携が実現

平岡:当社は、2018年から産総研と秘密計算技術の社会実装を目的として協業してきました。従来から産総研には秘密分散技術に関する知見をいただいていたのですが、秘密計算技術についても、産総研 サイバーフィジカルセキュリティ研究部門(CPSEC) 首席研究員の花岡悟一郎先生と密に連携させていただき取り組んでいます。御社と協業させていただくプロセスでも、花岡先生からは多くの助言や知見をいただいています。

清水:国を代表する研究機関と御社が協業し、良好な関係を築かれていることに強い信頼性を感じます。ともすると、企業は技術を個社で開発したいと考えるため、評価する側からは、そうしたこだわりが客観視を妨げているように見えてしまいますが、御社は産総研と密接な関係を構築し、きちんとした技術に根ざして開発していこうというところに気概を感じますし、そこへの信頼は欠かせない要素だと考えています。

平岡:ありがとうございます。当社は、国立研究開発法人科学技術振興機構が主導する「AIP加速課題」(※6)というプログラムにも産総研の下で参加させていただいており、そこで生まれた技術成果も御社との共創に活用させていただいているのです。産学がミッションとスピード感を持って取り組んだ結果、御社の価値創出に役立てられているのは意義深いことと考えています。

※6 AIP加速課題:AIP(Advanced Integrated Intelligence Platform Project:文部科学省の人工知能・ビッグデータ・IoT・サイバーセキュリティ統合プロジェクト)ネットワークラボ(革新的で先導的な基盤技術を強化するため戦略的創造研究推進事業の枠組みを活用した研究活動)の領域における優れた研究成果をベースに、新たな方向付けをした研究課題を支援し成果最大化を狙う取り組み。

清水:産学連携というとまずは形からというパターンが多いのですが、当社と御社と産総研が産学連携のある意味あるべき姿で協業が行われているのは大変喜ばしいことです。根幹には化学という産業がサイエンスも大事にしているという文化があるため、うまくコミュニケーションが成立しているのではないかと思っています。

石田:産学連携のお話で言うともう一つ、御社からいただいた課題のひとつ、アウトプット(出力)プライバシーについては、秘密計算技術で直接サポートできない部分だったため、産総研と相談した結果、大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所(統数研)の情報・システム研究機構 統計数理研究所 学際統計数理研究系 准教授 村上 隆夫先生をご紹介いただき、アドバイスいただけるよう連携させていただきました。御社は課題を率直に示していただけるので、それが産学の共創的な連携につながったと思います。

酒井:出力のプライバシーをどのようにケアすべきかについてはずっと悩んでいましたが、村上先生には本当に素晴らしい提案をしていただいて感謝しています。引き続き村上先生にご支援頂けるのはありがたいと思っています。

Resonac_ZenmuTech

8. ディープテックに対するアプローチ

平岡:御社は今回の秘密計算技術に限らず、ディープテックを積極的に検証し、ご採用されていると承知しております。こうした先進技術に対するアプローチを通じて、御社がアピールされたいことに興味があります。

清水:一般的な視点としては材料開発をいかに加速して、お客様にいち早く価値を提供していくか、例えば次世代のチップにはこうした特性が必要ですよね、といったところを化学メーカー視点で打ち込んでいくというところはあります。さらに当社の思いとしては、既存の領域だけではなく、次に来る、誰もわかっていない領域に対して先手を打ちたいという思いがあります。すぐにはビジネスにつながらないかもしれないけれど先に特許を取得し、何十年後かに花が開くタイミングではきちんとスタートラインに立てているような、攻めながら守るという視点を大事にしたいと考えています。

平岡:御社はシード技術に対しても、リアルな価値やシナジーを産む可能性をきちんと精査された上で取り組まれているような印象を持っています。

清水:いろいろ手広く活動していますが、シードがどう育つのかというところも大事にしています。

9. 両社共創の未来

平岡:最後になりますが、今後も当社は御社との共創を大切に進めさせていただきたいと考えております。改めて当社に対する率直なご意見やご期待のお言葉をいただければ幸いです。

酒井:御社は秘密計算技術の基盤を用意し、暗号の専門知識など必要なく使えるようにしてくださっているので、非常にありがたく思っています。また、御社がいなければ産総研の花岡先生や、統数研の村上先生とも関わる機会はなかったと考えていますので、今後もそうした連携を深めさせていただけるとうれしく思います。当社は化学分野に関する統計や解析の結果については分かりますが、秘密計算技術を活用する上での理論的な解決の方法などはお任せするしかありません。そうした相談や解決ができる関係性を今後も継続いただけるよう期待しています。

清水:御社には今後もディープテックとしてのこだわりを持ち続け、秘密計算技術を深掘りすることをこれからも大事にしていただきたいと思います。もう一つは、ディープテックがいかにユニバーサルになるかという視点もあるかなと思います。深掘りと同じくらい横への広がりという観点で、実験科学者が手軽に秘密計算技術を活用できるようなプラットフォームに育てていただけることを願っています。

石田:そうしたご期待に応えたいと思います。QueryAhead®は秘密計算技術の基盤であり、それをアプリケーションの形にして使いやすいように展開できるかは、御社をはじめとするお客様のご協力がなければ実現できない課題です。引き続き秘密計算技術が世の中に広く展開できるようお付き合いいただければうれしく思います。

平岡:私はかねがね、御社はビジョナリーカンパニーであると考えております。メッセージが明確で力強く、短期的な利益だけを求めずに、パーパスの実現をまっすぐに見据えて常にチャレンジされています。御社は技術や人材に対して非常に誠実で、ビジネスの駆け引きや裏表があまり感じられません。そうした会社とご縁があってお付き合いできたのは、当社が幸運だったことに他なりません。
日本は世界的に見るとデジタル後進国などと揶揄されることもありますが、秘密計算の分野には、日本が世界に誇る最先端の技術と知見があります。当社はそうした世界トップレベルの知見をいただきながら、それをプラットフォームへと落とし込み、現在、御社にもご活用いただいています。ぜひ御社におかれましては、材料化学とデータ活用の掛け算により、世界のフロントラインを疾走いただきたいと思います。そのために当社の秘密計算技術が少しでも貢献できれば、それだけでも、私たちがこの秘密計算事業を立ち上げた意味があったと考えています。引き続きよろしくお願いいたします。

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